Role of Network

日中は、ちょっと夏が戻って来たような蒸暑い週末になっています。外に出ても、結構近くですら、ぼんやり霞む、白っぽい感じで、遠景が効きません。ここ数日、この辺りに限れば、夜の大雨も降っていないので、余計に暑さが身に沁みるのかもしれません。
今週はブラウザの話題が盛りだくさん。
朝日新聞http://www.asahi.com/politics/update/0906/TKY200809060231.htmlみたいな記事が、これからどんどん出てくるのでしょうが、こういう歴史の裏側的な話は好きなので、興味深く読みました。少し引用もしておきましょう。

1日午後6時、首相官邸5階の首相執務室。福田首相は急きょ呼び出した自民党麻生太郎幹事長に、一枚の紙を差し出した。

 1週間前、首相と麻生氏らが秋の臨時国会の打ち合わせをした際、12日の召集日や代表質問など、9月の政治日程を書き込んだカレンダーだった。首相はおもむろに口を開いた。

 「この日程で、総裁選をやってほしい」

 突然のことに、麻生氏は黙り込んだ。首相はたたみかけた。「辞意表明をしようと思っている」

 ようやく意味がのみ込めた麻生氏は、あっけにとられた。

 麻生氏「いつですか」

 首相「今日」

 麻生氏「早いですな」

 首相「早いんだよ。こういう事は」

 麻生氏は慰留したが、首相の考えは変わらなかった。数分後に入ってきた町村官房長官も、首相の辞意を聞かされ、絶句した。「改造したばかりではないですか」

 慰留する2人を説き伏せるように、首相は一気にまくし立てた。

 「私は任期ぎりぎりまで解散するつもりはなかったが、政局によっては、追い込まれて解散になる可能性はある。ならば先手を打って、こちらに余裕がある状態で、勝てる態勢を作るべきだ。民主党が変わらないのであれば、自民党が先に変わって主導権を握るべきなんだよ」

 臨時国会が始まれば、早期の衆院解散を求める民主党の攻勢が一気に強まる。与党が追い込まれて手詰まりになりかねない。一方、自分が開会前に辞めれば、新しい首相が内閣支持率の高いうちに解散・総選挙に打って出る戦略も立てられるし、民主党も「解散カード」を振り回せなくなる――。首相の真意は、こうしたところにあった。

 「総裁選が始まるが、ぜひ国民がわくわくするような、エネルギーに満ちあふれた自民党を多くの皆さまに見せて欲しい。この際、徹底してやって頂きたい」

よく、権力者の孤独とか、決断の孤独とか、という話がありますが、この記事でも福田さんの孤高な決断が象徴的に書かれています。

 一方で、首相は前日の31日午後、首相公邸にひそかに官僚を呼び入れ、12日に召集を予定していた臨時国会での所信表明演説の原稿を練っていた。

 辞意表明への準備と、臨時国会への準備。首相周辺はいう。「ギリギリまで悩み、二つの作業を同時並行で進めていたのだろう」

 首相は麻生、町村両氏にこう言った。「無責任と言われるかもしれないが、いま辞めるのが、最も責任のある辞め方だ。今を失えば、機会を失う」

個人的に、いくつか読んだり聞いたりした範囲の中では、今回の福田さんの辞任にはある程度合理性、戦略性があるなと、共感しています。皆に、福田さんの思いが通じるかどうかは分かりませんが、見出しにもある、「先手を打つ」意気込みは、日本の政治家、特に福田さんの様な方には、結構、珍しい、積極的な考え方だと思うのです。
ところで、これもステレオタイプではありますが、日本の政治家は話し合って、ネゴって、物事を進めていくイメージがあります。でも、福田さんは、一人ぼっちの決断をした。一般論としてですが、最近、マネージャーは一人で決断しないといけない場面が増えているのかな、という思いが、頭をかすめました。ネットワーク時代で、人とコミュニケーションをとるのが容易になっている筈なのに、逆に相談ができない。これを、同じ様にネットワークを通じて、大事な相談もすぐ、それこそ瞬時に漏れ拡がっていってしまう危険と背中合わせだから、という解釈はできないでしょうか。そこまで大げさに言わなくても、チームが大きくなって、責任も分散されていて、主要メンバー2〜3人選んで相談をするのが難しい世の中になっている。ということは、あるかも知れないな、と、感じた記事でした。ちょっと気にしたいテーマです。